2012年11月28日

ブランドとブランドネーム〜共感企業〜

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ブログ移行中につき更新を控えていたのだが、というのも書けば書くほど記事の移行が手間なのだ。
まぁ、そんな理由で書かないのもどうかと考えを改めまして2日間の帯広ツアーで感じたことを少しづつ
書いてみたいと思います。

震災以降、「共感」という言葉をやたら耳にするようになった。
欲を刺激してモノを買う時代から取り組みなどに「共感」して消費が動く時代になった。
いや、なりつつあるのかぁ、というのが本当のところだろう。

しかし現実には不景気も影響して安価なモノに目がいってしまうのが一般的のように思う。

別にそれが善でも悪でもなく、いくら志があってもお財布の中身と相談しなければいけない
それが生活者であって私もできれば高いより安いほうが良い。

さて、帯広でオークリーフ牧場の柏葉社長とお会いする機会をいただいた。
セッティングしていただいた北村貴さんには感謝感謝でお返しするものがなにもないのが心苦しい。

オークリーフ牧場は4000頭の牛を10人で飼育していてそのスケールのデカさにまず驚いた。
地域内循環の畜産を行い、動物にやさしい環境を作り、エコフィードで環境負担を低減し
やわらかな空気が流れる澄んだ牧場だった。

北海道という土地柄なのかもしれないが、のんびりとした空気が漂う中、
柏葉社長の大らかさから醸し出す素敵なオーラが今回訪問した私たちを魅了した。

近江牛の生産農家で平均200頭ということを考えると、4000頭は個人ではなく1つの企業だ。
私がいままで出会ってきた4000頭規模の畜産経営者は悪い顔をしている人が多かったせいもあり
柏葉社長のやさしさがにじみ出た顔にはある意味衝撃だった。

そんな柏葉社長が手塩にかけて育てた牛たち(F1)は「未来めむろ牛」として出荷されていく。

サシを追い求めず、健康を追い求めるためにエサにこだわるあたりは、スケールは違えど
私たちの取り組みと同じであり「共感」できる部分が多くあった。

さて、今回の帯広行の目的はJOYWOWの阪本啓一氏の呼び掛けによるものでちゃっかり便乗したと
いうわけだ。

オークリーフ牧場を後にして、セミナー会場へ向かう車中で1冊の本が頭に浮かんだ。
阪本氏の著書で「共感企業」というタイトルの白っぽい表紙の本だ。
実は会社の本棚に飾っているだけで読んでいない。
読むタイミングを失った1冊である(阪本さんごめん)

翌日、雪が舞う帯広を後にして無事遅れながらも飛び立ったJAL
どうにも「共感企業」が気になったので家には帰らず会社へ本を取りに直行した。

「共感企業」

共感企業とはなにか、ではじまるプロローグ

私の頭脳がどんくさいのか阪本さんが先走りしすぎているのかこの本はズシンと響く。
いまこそこの1冊を読むべきとだいう内容が詰め込まれているではないか。
一応断っておくが、私はなにも阪本さんをヨイショするつもりも本のPRを頼まれたわけでもない。

11月14日に京都で農研機構の近畿地域マッチングフォーラムと日本産肉研究会の第10回学術集会が
開催されたのだが講演終わりに聴講者の方からこんなことを言われた。

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事前に配布された資料に講演者の紹介があって、サカエヤさんのロゴマークを見て
あ、私が以前にお肉を購入した店だというのを思い出した。

つまり、店名は忘れていたがロゴマークを覚えていたので(この場合はなんとなくだろうが)
私と繋がったというわけだ。

この方が購入されたのは「熟成肉」ということだったので、恐らくキーワード検索で当店にたどり着いたのだと推測できる。


「共感企業」では、「ブランドは売るのではなく選ばれる」と書かれている。
ブランドとブランドネームは違うということもなるほどとヒントになった。

例えばこういうことだ。
近江牛.comはブランドネームで「近江牛熟成肉を販売する日本唯一のネットショップ」が
ブランドということになる。

そういった2つの視点で街中を探索し、テレビCMをみるとおもしろいことに気付く。

検索商材の知人たちはパンダだのタヌキ(笑)だので右往左往しているが
検索の時代だからこそブランドが重要であり、そして1人の顧客の後ろには未来の顧客が控えているという
ことがものすごく理解できる。

もちろん、ロゴマークも企業の旗として大切な役割を担っている。

阪本啓一氏の書下ろし『「たった1人」を確実に振り向かせると100万人に届く』は
私もすでに読んではいるが、いま読めばより深く違う視点で理解できそうな気がする。

なにわともあれ気づきの多い実りある帯広2日間だった。

ご縁のあったみなさま、ありがとうございました!



posted by niiho at 16:06| 雑記

2012年11月25日

正体の見えない割安な肉と顔の見える安全な肉

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近江牛が入荷すると販売前に試食するのだが、ほとんどの場合はステーキか焼肉で、
炒めたり煮たりすることはほとんどない。

しかし、これからの時期はすき焼き肉がよく売れるということもあり、昨日は簡単な具材も用意して
すき焼きで試食してみた。

赤身のウデ肉から特に硬そうな部分を選んでの試食だったが抜群においしかった。
サシの多い肉のような「とろけ感」はなかったものの胃もたれしないキレのある味わいは
普段飲まないビールが欲しくなるほど秀逸な味だった。

ところで、外食の多い私だが、ついつい気になるのが日本中どこで食べても「牛肉」だ。

私が幼いころは、牛肉といえば「ハレの日」の食べ物で、滅多なことでは口にすることができなかった。
正月に家族ですき焼きを食べるぐらいで、現在のように牛丼屋もなければコンビニもない時代だ。

私が外食でぜったいに行かない店がある。
誘われることもないが割安感を前面に出した食べ放題の焼肉だ。

10年ほど前は食べ放題の焼肉チェーンが人気を集めたのだが、
2001年の牛海綿状脳症(BSE)問題で、消費者の食肉に対する安全が高まったのをきっかけに
淘汰されていった。

しかし、先の見えない不景気に加えて牛肉のユッケ事件やレバ刺し問題などで消費が低迷すると
ふたたび食べ放題にシフトする店をちらほらと見かけるようになった。

単品よりもこのほうが割安感があるのだろう。

しかし「企業努力で安く」を謳い文句にしている店をよく見かけるが、
牛肉の背景がまったく見えず、産地すら不確かな場面に出くわすこともある。

米国産や豪州産と明記していればまだ良いほうで、アルバイトスタッフに聞いても
答えられないといったことも少なくない。

食べ放題の店にそこまでの接客レベルを求めるのは無茶なのかも知れないが、
消費者が求める安全、安心と実際の行動には「価格」という障壁による隔たりを
感じずにはいられない。

なにか問題や事件が起これば、また立ち止まるのだろうが、一方では「顔の見える食材」を売りにしたい
飲食店が増えてきているのも事実だ。

「本物志向」という言葉を一時よく耳にしたが、一部の飲食店では生産者や産地との良好な関係を
継続して高くても信頼のできる安全な食材を使い続けている。

そこに消費者が共感し熱烈なファンとなり末端からバックアップできている仕組みが自然と作られている。

昨夜は、大阪マラソン前夜ということもあり、賑わいの大阪の夜を満喫したのだが2極化している
飲食店に感動したり呆れたりと忙しい夜だった。

さて、数か月前にきたやま南山さんで開催した「やまけんが育てた短角牛」のイベントで同席した
葉山の山口さんとモモ肉のドライエージング話で盛り上がり、じゃー試しにやってみますかと勢いと
その場のノリで引き受けた熟成肉が27日で40日を迎え解禁となる。

山口さんがお店で使うためには近江牛では価格的に合わないとのことなので、鹿児島県産の黒毛和牛で
しかも肉質が硬い経産牛を選ばせてもらった。

もともと赤身の多い硬い肉をいかにしておいしく食べさせるかということで初めたドライエージング
だったので、そういう意味ではドンピシャな肉をチョイスしたということになる。

仕上がりが良かったらサイトでも特例として販売する予定なので、興味のある方は楽しみにしていてください。




posted by niiho at 12:46| 雑記

2012年11月23日

牛肉の新しい価値を求めて

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写真は京都ホテルオークラで開催された「信州プレミアム牛肉」発表会のメニューの1つ、「牛ロースの白胡麻と黒胡麻焼き」だ。

カットした状態では分かりにくいのだがカット前はこんな感じ。

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牛肉の評価は格付けによって決められているのだが、これは日本格付け協会による牛枝肉取引規格に基づいて格付け委員が行う。しかし、委員によってその評価はまちまちで厳しい格付けのときもあれば逆に甘い格付けのときもある。

厳しいとはどうみてもA5なのにA4の評価であったり、甘いとはその逆である。


信州プレミアム牛肉は、格付けにプラスしておいしさを左右する成分の一つであるオレイン酸の含有率を使った独自の認定を行うというものだ。

つまり、科学的に測定した牛肉のおいしさをブランド化するというもので、牛枝肉取引規格のうち脂肪交雑基準および胸最長筋(ロース芯)中のオレイン酸含有率について、以下のいずれかの条件を満たす黒毛和種の去勢又は未経産牛を「信州プレミアム牛肉」として認定するのだそうだ。

@脂肪交雑7以上(4等級の上限)及びオレイン酸の含有率55%以上

A脂肪交雑5以上(4等級の下限)及びオレイン酸の含有率58%以上

B脂肪交雑8以上(5等級の下限)及びオレイン酸の含有率52%以上

鳥取県でも「鳥取和牛オレイン55」という新ブランドが昨年に誕生した。
こちらは、脂肪中に平均55%以上のオレイン酸が含まれていれば認定対象となるそうだ。
信州、鳥取ともにオレイン酸の測定には専用の測定器を用いるのだが、科学的に味が検証できればおいしさの裏付けが証明され、脂肪(サシ)の量を競うブランド和牛の世界とは違った価値観が消費者にも販売者にも根付くかも知れない。

脂肪交雑(サシ)の多い牛肉ほど、ジューシー感や「和牛香」と呼ばれる香りが高まることは専門家の調査でも明らかになっているが、おいしさの指標の1つとしてオレイン酸は以前より注目されていた。
しかしある研究者によればオレイン酸は味には関係ないとの意見もある。

どちらにしても、ブランド力が強い牛肉がどうしてもおいしのではないかと誤解されがちだがこういった証明がされることにより、無名なブランド牛にも日の目が当たれば牛肉の需要がもっと広がることは間違いないだろう。

なにを選ぶのかは消費者であり、現在取り組んでいる私たちの取り組みも同様のことが言えるのだが万人受けすることを望んでいるのではなく、1人でも多くの方が共感してくれれば必ず価値が繋がると思う。

近江牛はブランド牛として名前は知られているが、高評価を受けるのはサシがたくさん入った格付けの良い牛なのだ。同じような環境で育った牛でも格付けが低いと評価はされない。
味に関しては、格付けにはあまり関係なく、おいしいであろうという思い込みの部分も否定できない。

ブランド牛でも、もっと言えば同じ近江牛でも販売者の持論によって大きく異なる。
A5などのサシがたくさん入った肉を求めるなら当店は得意ではないので他店にお任せすることになるし赤身でおいしい肉を探しているなら当店で用意することが可能だ。

良い牛の条件は「血統」「飼料」「環境」だといわれている。
私もその通りだと思うのだが、余裕を持って管理できる頭数と1頭1頭に注がれる愛情が最も重要だと思う。

当店では、生産者情報や飼料などを公開しているが安全性を公開すればするほどより安全性を求められる。

同じようなことだと思うのだが、サシを追求すればするほど牛に負担をかけ事故に繋がるケースも少なくない。

「私たちが食べている動物が何を食べているかで私たちの健康が決まる」

この言葉を今一度じっくり考えてから商品を手にとっていただきたい。


posted by niiho at 12:55| 雑記