2012年11月11日

牛の飼料について当店の取組みと課題、そして解決方法

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知人が鉄板焼きの店を出したいと前々から相談を受けていたのだが
できれば友人知人と商売はしたくないので牛肉は他所をあたってもらうことにした。

先日、開店祝いを兼ねて伺ったのだが牛肉はブランドにこだわらず料理人の目利きで
仕入れることに落ち着いたようだ。

ヒレをご馳走になったがあたりさわりのない味だった。
うまからずまずからずといったところだ。

これは嫌みでもなんでもなく、ヒレに求めるのは柔らかさであり香であり
輸入牛肉には感じられない芳醇な旨味が感じられれば私的には満足なのだ。

ただ、ヒレでもサシがよく入ったものは重くて苦手なので、できれば「ほどよく赤身」が
食後のデザートまでおいしくいただける。

昨日、「モンサントの不自然な食べもの」を見たのだが、モンサントとはアメリカの
アグリバイオ企業で不思議な食べものとは、遺伝子組み換え作物のことだ。

モンサント社は、遺伝子組み換え世界シェア90%だそうで、作中では、アメリカやメキシコの
深刻な状況が映し出されていた。

日本の畜産においても、輸入飼料に依存しなければ経営が成り立たないのが現状だが
今後も恐らくこの状況を打破することはないだろう。

さて、今日は飼料のことを少し書いてみたい。
「モンサントの不自然な食べもの」を見た影響ということでもないが
じつは、13日に迫った「日本産肉研究会」での資料がまったく手つかずで少々焦っているのだ。

現在の肥育技術は配合飼料給与による脂肪交雑主体の肉牛作りで、
いかにサシを入れるかが肥育技術であり、またサシを競い合うかのように各地で
品評会が開催されています。

もちろん、それを否定するつもりは毛頭ないが「日本産肉研究会」では、
国内資源を有効に利用して肥育を行い、どちらかといえば「サシ」ではなく「赤身」主体の
肉牛作りを行なうことを研究しようということが目的なのだ。

霜降り肉があり赤身肉があり、その赤身肉をよりおいしく食べる方法の1つとして熟成肉があり
選択枠が広がるのは消費者にとってはうれしい限りではないだろうか。

飼料については、一般的にはあまり知られていないが(じつは肉屋さんもまったく知らない)
育成期、肥育前期といった飼養上のステージによって内容が異なるのだ。
これは人間と同じで成長段階によって食べものが変わるのと同じだ。

書けば長くなるので簡単にまとめるとこういうことだ。

骨や筋肉の発育が旺盛な時はタンパク質やミネラルの多い飼料を給与して
肉質を柔らかくします。肥育期には脂肪交雑(サシ)をいかに入れるかが重要となり
でんぷん質の多い高カロリーの飼料を給与します。

牛は本来、草食動物なので粗飼料(稲藁)は必ず給与しますが、牛の胃は4つあり
それぞれに役割があり・・・これも書きだすと長くなるので割愛。

私たちの取組みは、国産飼料だけで肉牛を育ててなおかつ健康的な赤身になるように
健全な畜産をしようというのが目的だ。

「モンサントの不自然な食べもの」を見た後に、私の講演を聞けば恐らく近江牛.comの
サーバーが落ちてしまうほどの注文が殺到するだろう(笑)

しかし、私たちが取り組んでいる環境保全型畜産にも問題がないわけではない。
これは無農薬、減農薬とて同じだ。

今後は、安心安全の観点から抗生物質や化学肥料が極力制限されたものを求める
消費者とそうではなく安価なものを欲する消費者に二分されるだろう。

バブル期以降から、安ければ安いほうが良いという時代だった。
たぶんこれからもその流れは変わらないだろう。

しかし、ここ数年エシカルな食を支持する層が確実にでてきたのも事実なのだ。
特に2011/3/11の震災以降、私たちの取組みに共感した方々が当店の牛肉をリピートし
続けてくれている。

先に私たちの取組みにも問題がないわけではないと書いたが、例えば稲藁は自分たちで
種を蒔いて田畑を耕して収穫している。いわば天然ものだ。

しかし、天然ものを含む国産品は輸入品と比較するとかなり高価になる。
つまり生産コストの上昇につながり、経済動物としての肉牛には不向きなのだ。

2004年頃、トレーサビリティの仕組みを作る際に近江牛の生産農家をレポートした。
そのときに各生産者に「どのような牛が良い牛ですか?」と質問したことがある。

みなさん一同に「そら金儲けしてくれる牛やろ」という示し合わせたような返答だった。

格付けでA5-BMS12や共進会でチャンオピオンを獲るよりも10円でも高く売れたほうが
ありがたいというのが本音のようだ。

となれば、高い国産品はますます使えないというわけだ。

以前なにかの本だったかだれかの講演だったのか忘れてしまったが
有機栽培で育てられた稲藁を食べた子牛は肝蛭病(かんてつびょう)に冒されることがあると
聞いた覚えがある。肝蛭とは吸虫でいわゆる寄生虫だ。

ヒメモノアラガイが中間宿主となり、最終宿主が牛や豚になり感染すると発育不良が
見られるそうだ。

先日の記事にアップした藁の収穫時の写真だが↓

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10p〜15cm程度残して刈り取っているので非常に歩きにくく、写真のような移動方法になるのだが
これにはちゃんとした理由があり、木下さん曰く、稲にタニシや巻貝が棲みつきそこに菌が
発生する。その稲を食べた牛は肝臓を悪くするために、面倒だが稲を長めに刈っているとの
ことだった。

恐らく肝蛭のことを言っているのだろうと思うのだが違っていたら指摘してください。

どちらにしても、安全性を求めれば問題もでてくるわけで1つ1つクリアしていき
講演やイベントなどを通じて、消費者とのエンゲージメントを深めていきたい。
そして、1人でも多くの方に共感していただければ私も生産者もうれしいです。



posted by niiho at 13:45| 雑記

2012年10月31日

農業高校の生徒たちが育てた豚肉は想像を遥かに超えたおいしさだった

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ドライエージングビーフ(近江牛熟成肉)が売切れ中につき
問い合わせが殺到中だ。

殺到中といえば大袈裟かも知れないが、当店のような小さな店に1日10件程度の
問い合わせが毎日のように寄せられればこれはもうりっぱな殺到中なのだ。

通常の肉と違って、熟成肉は40日以上寝かせる期間が必要なので
どうしてもコンスタントに販売できない。

逆算してドライエージングすれば良いようなものだが
熟成に見合った肉がなければ今回のように販売できない期間がでてくるのだ。

お待たせしているが、近々での仕上がり予定は11月11日なので、
遅くても16日あたりから販売を再開できそうだ。

さて、写真の豚肉は今宵の私の晩飯になるのだが
以前にも紹介した某農業高校の生徒が育てたオーガニックポークだ。

来月から正式に販売を予定しているのだが、とにかくうまい。
お世辞でもなく、売りたいがための謳い文句でもなく
私がいままで食べてきた豚肉の中で一番うまいといっても決して言いすぎではない。

脂が甘くて肉質が嫌みのない自然な柔らかさなのだ。
トンカツやポークソテーなどは肉の繊維をカットするために
ジャガード(肉の繊維を切る簡易的な道具)などで筋切りするのが通常だ。

しかし、なんにも手を加えなくても柔らかくて旨味が凝縮されているのだ。
あぁ〜、早く販売したい、早くお客さんの感想が聞きたい。
豚肉でこれほどわくわくするのは初めてかもしれない。

販売は、店舗のみでネットでは考えていない。
ただし、わくわく定期便には毎月なんらかの形で組み入れたいと思う。
会員さんはぜひ楽しみにしていただきたい。

ところで、先日、東京の新橋で豚レバーを生で提供している店を発見した。
その数日前に、朝のテレビでも豚の生食を特集していたのを見たところなので
ほんまにそんな店が存在するんやと驚いた。

テレビで見た時は、居酒屋だったと記憶しているのだが
レバーの他に、いかに新鮮なのかを証明するためにと舌(タン)先をまな板に打ちつけて
「ね、ピクピクしてるでしょう、これが新鮮な証拠なんだよ」とかなんとか言っていた。

おまえはアホか!と思わずテレビに突っ込んだが
食肉関係者にとって豚の生食など考えられないことだ。

例えば、冒頭の高校生が育てた豚なんてものすごく健全な育て方をしているのだが
それでも生で食べることはできない。

販売する側にも責任はあるが、卸業者はもっと知識を持って扱ってほしい。
何か事故が起これば、事故を起こした1軒の店だけで済まないのは歴然なのに。

ネット販売でも良く似たことはたくさんあるが、消費者の方々は
知識と常識のある店で健全な買い物をしてほしいと願うばかりだ。



posted by niiho at 17:26| 雑記

2012年10月30日

リ・デザインで生まれ変わった商品

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昨日は倉敷にある水辺のカフェ三宅商店へお邪魔した。

MAIDOMAIDO-internationalのイベントだったのだが
定休日のところをOPENしていただき感謝。

MAIDOMAIDO-internationalとは(→クリック

「三宅カレー」がとにかくうまかった。
実はカレーは好きなのだが苦手なのだ。

なにをワケのわからんことを・・・
と突っ込まれそうだが、食べ終わった後の太りそうな感じが嫌なのだ。
胃もたれして霜降り肉を食べすぎた後と似ている。

その点、三宅カレーは食べ終わったあとも体が軽かった。
あっさりとして特製カレーに玄米も体に良さそうだ。

カレーといえば、当店でも「近江牛専門店が極めたカレー」
販売しているがコンスタントに売れ続けている。

1箱1050円なので気軽に食べられないとの声をたくさんいただくのだが
ちゃんとした(意味深だが)近江牛を使えばどうしてもこれくらいの価格になってしまう。

ミンチを使ったキーマカレーでも1箱735円と高めの設定だ。
こちらも順調に売れ続けているのでしっかりとファンがついてくれているようだ。

さて、三宅カレーを食べた後は、林源十郎商店へ。

ここで私が注目したのは、こちらだ。

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「koji 100」

要は甘酒なのだが、あまりにもおいしかったので1本買った。

もし、ラベルが「あま酒」だったら、いくらおいしかっても
手荷物が大嫌いな私は間違いなく買わなかっただろう。

店主の説明はこうだ。

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2012年夏、懐かしくて新しい夏の健康飲み物として誕生しました。
米こうじのみ(100%)を使った、栗をすりおろしたような香りとすっきりとした
こうじだけの甘みが新鮮な甘酒です。
甘酒と聞くと、冬の温かい飲み物、独特の匂いが苦手、アルコールが入っているのでは…
というイメージがあるかもしれませんが、甘酒はノンアルコールで、実は夏の飲み物なのです。
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8月販売時のテキストなので夏向けになっているが、間もなく冬用に変わるだろう(たぶん)

当初は甘酒として販売していたらしく、イマイチの売れ行きだったそうだ。
それが「koji 100」としてリ・デザインしたら売れだしたそうだ。
もちろん「おいしい」からリピートもされるだろうが、手にとる“きっかけ”としては
「甘酒」より「koji 100」というネーミングと懐かしさを残しつつリ・デザインした
ブランディングだろう。

当店にもネーミングを変えてヒットした商品がある。
霜降りモモすき焼き用だ。

上質なモモ肉には、サシが入る場合が多いのだが
一般的には「モモ肉=赤身」というイメージがあり、クレームをいただいたことがあった。

お客さんの言い分はこうだ。
サシが入っているのでロースではないのか?
ということだった。

説明してご納得はいただいたのだが、それならいっそのこと
マイナス面をそのままネーミングにしてしまおうと「霜降りモモすき焼き用」と
リ・デザインしたわけだ。

もちろん、その後はクレームは一切なく、売れ筋の商品に成長したわけだが
味に自信があってもイマイチ芳しくない商品は、ネーミングやパッケージを
リ・デザインすることで生まれ変わることがあるといった事例である。

当店には他にもこのような商品がある。


脂が多すぎてクレームになった小腸(コプチャン)を
“あぶらホルモン”としてネーミング

もつ鍋が売れる時期のみの限定ネーミング
“もつ鍋に入れたらおいしいホルモン”

とまぁ、そのままやん!という名前の商品名がたくさんある。

分かりやすくて商品説明が省略できるのでシンプルなプレートで
展開できるのがうれしい。

posted by niiho at 14:28| 雑記