2012年10月28日

とろけなくても旨い牛肉

疲れは移動距離に比例するらしいが、出張が続くと体調が芳しくない。
とはいっても、全国津々浦々、おいしいものが食べられるので出張も楽しいものだ。

できるだけその地の名物や特産品を食べるようにしているのだが
それでも牛肉の看板を見つけるとついふらふらと誘われるように入ってしまう。

一昨日は、東京アメリカンクラブでニュージーランドの牧草肥育牛をいただいた。
店内が暗すぎて写真では迫力が伝わらないがこんな感じだ。

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「トマホークロングボーンリブアイ」というユニークなネーミングに
25オンス(700g)の骨付き肉は迫力満点だった。

味はというと、これがめちゃくちゃおいしい。
サシの入った和牛とはまったくの別物でついついワインを飲みすぎてしまった。

昨夜は久しぶりに自宅で食事。
いつか食べようと冷凍庫に保存してあった十勝若牛のサーロインを焼いてみた。
これがまたうまい!脂肪が少なくヘルシーなのでいくらでも食べられるのだ。

ナイフを入れてもサシの多い和牛のようにすーっとは切れない。
ジャリジャリといった感じで肉の繊維を切ってる感じがナイフを持つ手に伝わる。

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ニュージーランドの牧草肥育牛も十勝若牛も嫌味の無い赤身肉なので
毎日でも食べられるテーブルミートとしての位置づけだ。
もちろんテーブルミートなので価格もリーズナブルで生産性にも富んでいる。

一方、近江牛をはじめとするブランド和牛は、お世辞にもテーブルミートとは言い難く
記念日などの「ハレの日」に食べていただきたい、いわばとっておきの牛肉なのだ。

そういえば、私が幼い頃は牛肉なんてお盆と正月くらいしか口にすることはなかった。
牛肉の自由化により安価な輸入牛肉が出回りだしたあたりから「牛肉」の価値観が大衆化し
そして手が届く身近な食品になったのではないだろうか。

もちろん普及という意味では歓迎されることではあるが、来月あたりからはじまるお歳暮需要には
ぜひ洗練された近江牛ギフトをお選びいただきたい。(⇒クリック

こちらは当店のオリジナルでもある近江長寿牛です。
テーブルミートとしてご利用ください。

近江長寿牛(⇒クリック


posted by niiho at 14:39| 近江牛

2012年10月02日

私たちが食べている動物が何を食べているかで私たちの健康も決まります

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枝肉でドライエージングさせているのだが、白黴(シロカビ)が発生しているのが
お分かりいただけるだろうか。

「黴」と聞くと、聞こえはよくないのだが、白黴は筋肉内の水分によって増殖し
水分が少なくなると死滅するのでご安心を。

こういった写真は、肉関係の方は興味深く見ていただけるのだが
そうではない方にはキツイとのご意見を伺ったことがある。

ほな載せんなよ、て話ですが(笑)

先日、あるイベントに熟成肉を使うことになったのだが
さてだれに料理してもらおうか、ということで数名の料理人が手をあげてくれた。

みなさん経験豊富な方たちばかりなので、熟成肉焼くぐらい簡単なものという感じで
余裕しゃくしゃくなのだ。

豚肉を熟成させたことがありますから・・・
子羊を熟成したことがありますから・・・


しかし・・・


ドライエージングビーフはそんなに甘くない。

最近、いろなところで熟成肉の話を聞いたり質問されたりするのだが
レストランの厨房内で熟成させているケースが非常に多い。

先日も、ちょっと見てください、熟成に成功しました!
というので某所へ見にいったのだが、確かにそれなりの香りはしていた。
ただ、肉色は茶色っぽくネトが出ていた。つまり腐っているのだ。

売れる料理を作りたい、そんな思いから流行りの料理を取り入れ
気がつけば業態が変わってるやん、という店も少なくない。

経験と知識がなければ見よう見まねでできるほど甘くない。
自店の強みをみつけて磨きたおすことが賢明であり長続きするのだ。

特に熟成肉は、経験と知識に加えて設備がなければうまくいかない。
しかもドライエージングとなればなおさらである。

レストランの厨房内で簡易的に行われる熟成肉は、腐敗する可能性があり
万が一、お客様が食べて事故にでもなれば、ユッケ問題のように1店舗の問題ですまない。

さて、私も会員である日本ドライエイジング普及協会の会長、服部津貴子さん
(学校法人服部学園服部栄養料理研究会会長)が会のHPにこんなことを書かれている。


38年前に始まったアメリカの食育のスローガンは「食べたものが私自身、そして貴方自身です。
私の健康は何を食べたかで決まります」となっています。
食べたものがその人自身となっていきますので、「バランスの良い、安全な食べ物が大切なんだよ」ということを日本の食育でも教えています。私たちが食べている動物が何を食べているかで私たちの健康も決まります。


短い文章だが大切なメッセージが込められているように思います。
特に「私たちが食べている動物が何を食べているのか」という点においては、
先に開催したプレミア近江牛がまさにそうであり、見えない輸入飼料に依存せずに、
目に見える国産飼料を食べさせて育てるという取組みが今後も注目されると思う。

ということで、少し関連したセミナーをご案内させていただきます。

【11/13日本産肉研究会 第10回学術集会】

11月13日に京都にて、「日本産肉研究会」のシンポジウムが開催されます。
一般参加もOKなので、ぜひご来場いただければうれしいです。

2012年11月13日(火)
「日本産肉研究会」第10回秋季集会
会場:キャンパスプラザ京都 第3講義室
京都市下京区西洞院通塩小路下る JR京都駅ビル駐車場西側 077-353-9111

1部 14:00〜18:00
テーマ 「牛肉の価値を再構築する」

(1)分子栄養学の観点からお肉を食べよう
   定真理子 (新宿溝口クリニック)
(2)給与飼料の違いによる牛肉の種々の違いを考える
佐藤健司(京都府立大学 大学院生命環境科学研究科 教授)
(3)牛肉の新しいブランド戦略
新保吉伸 (株式会社 サカエヤ)
(4)ふる里と人を育てる牛肉のエシカルな評価基準を考える
熊谷元(京都大学 大学院農学研究科 准教授)

2部 19:00〜21:00 交流会(19:00〜21:00)

テーマ:放牧や自給飼料で育った各地の牛肉の食べ比べ
草原短角牛(東北大)、北里八雲牛(北里大)、有機短角アップルビーフ(弘前大)
放牧仕上げの熟ビーフ、グラスフェッドの黒毛和牛(九州大学)、近江長寿牛・・・

会場:きたやま南山
会費:5,000円(90名になり次第締め切り)
075-722-4131


【11/14 日本産肉研究会 第10回学術集会 現地検討会】

日 時:2012年11月14日(水)  
9:30〜12:00(9:15集合)
集合場所:和牛焼肉きたやま南山
見学先:滋賀県・木下牧場 繁殖肥育一貫農家による「近江牛粗飼料生産組合」の取り組み
 参加費:無料  (マイクロバス定員20名)  ◎自家用車による参加はできません。
 ※近畿地域マッチングフォーラム側にも現地見学会の参加枠があります。
昼 食:希望者のみ2,000円 
 琵琶湖畔「プレーゴ」 木下牧場の近江牛ランチ



posted by niiho at 12:05| 近江牛

2012年09月06日

プレミア近江牛の問い合わせが増え続けているのだが。

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「肉牛ジャーナル」の記事(→クリック)を見たと言う問い合わせが多い今日この頃。

私はてっきり牛飼い(肉牛生産者)が読む雑誌だとばかり思っていたのだが
焼肉店やレストランからの問い合わせが多くて正直ビックリしている。

国産飼料だけで、しかも滋賀県産の飼料のみで育てたプレミア近江牛は
県の偉いさん方もショックを受けたほど素晴らしい仕上がりだった。

チャレンジしてもとうてい行きつかない領域。
ちょっと大袈裟かもしれないが、それぐらいの覚悟を持って取り組んでいる。

問い合わせの多くは価格だ。
サシがどうだの、格付けウンヌン言ってる方には扱いにくい牛肉であり
実際に、牧場の様子や牛を見て説明させていただかないと恐らく理解できない世界だと思う。

味に関しても、食味検査で意見がわかれたように国産飼料をたっぷり食べさせた
プレミア近江牛だからといって特別おいしいというわけではない。

見てほしいのは、知ってほしいのはその背景なのだ。
そういったものもひっくるめて味わってほしい。

肉質の仕上がりで価格を決めていないので、ストーリーが分かっていないと
絶句するほどの高価格なのだ。

サシを追い求めるのが黒毛和牛の生産農家であり、あたり前だがそれが本筋だろう。

しかし、消費者が求めているのはそこではない。

今日も経営不振の牧場を譲り受けてくれないかと相談された。

今日「も」ということは頻繁にあるということなのだが
私は、いままでもこれからも牧場をする気は毛頭ない。

牧場をやって、流通や販売もやって、小売りもやっていれば一気通関の仕組みで
安全性が確立されているように見えるが、それぞれに経営という分野が存在するわけで
数字を追い求めれば消費者が見えなくなる。

それぞれの分野でがんばっている人たちが手を組むことこそ
消費者に近い商売ができるのではないかと思う。



posted by niiho at 16:41| 近江牛